一番は(全1ページ/ボカロ/鏡音双子設定/学パロ/レン視点)
「レン、今日は教室まで迎えにきてよ」 朝、別れ際に言われた言葉だった。だから理由も聞けないままで。 長引いているSHRにいらいらしながら、双子の姉のことを思い出していた。勝ち気で少し我が儘で天然の入った可愛い人。身内のひいき目なしにリンは可愛いのだろう。事実、小さい頃は男の俺でさえ可愛いと言われていたのだから。 ようやく終わったSHRに俺はため息をつきながら、早足でリンの教室に向かった。クラスメイトの女の子が話しかけてきた気がするけど、それどころじゃなかった。 (機嫌損ねてるかな……) いつものリンも最近は俺にとっていろいろ大変だけど、不機嫌なリンも扱いづらい。 リンの教室にたどり着くと、俺が声をかける前にリンが俺に気づいた。 「レン!」 嬉しそうに駆け寄ってくるリンに俺は脱力した。どうやら杞憂だったみたいだ。 「遅くなってごめん。一応急いだんだけど」 「全然いいよ。荷物とってくるから待ってて!」 言った途端、駆け出すリンに俺は苦笑する。さっきまで話していただろう友達におざなりな挨拶をして、俺の元に戻ってきた。 「いこっ」 「止めろって!」 自然な流れで腕を絡めてくるリンを振り払う。こっちの心臓がもたない。 「だからレンはツンデレって言われるんだよー」 「うるさいなあ」 俺じゃなくて、気づかないリンが悪いんだ、と自分に言い訳をする。 さっきからどこかご機嫌なリンに疲れるなあと思いつつ、悪い気はしなかった。 「なんでそんなテンション高いわけ? いいことでもあった?」 「うん。レンが来てくれた」 「……だってリンが来いって言っただろ?」 「そうだけど、女の子いなかったし」 「?」 「いつも私がレンのクラス行くと、女の子と楽しそうにしゃべってるんだもん」 ぷくっと頬を膨らませるリンに俺は驚いた。 多分、嫉妬してるって気づいてないんだろうけど。 俺はリンの頬をつっつきながら、ため息をついた。さっきとは違って、決して悪い意味のため息ではない。 「俺はクラスメイトとしゃべっちゃいけないの?」 「そういうわけじゃないけど……」 そういうわけなんだな。 リンの前でクラスの女子と話さないようにしなきゃな……、と面倒に思った。 でもまあ、しょうがない。それでリンが喜ぶなら。 「レンの一番は私でしょ?」 「!」 「私はレンが一番好きだよ。違うの?」 「……違くないよ」 「なら、いいや」 また嬉しそうに笑って歩きだすリン。 「待ってよ」 昔と違って、自分より少し低い位置にいる姉を追いかける。 ――結局いつだって、俺はリンに振り回されているんだ。