居場所(全1ページ/微腐/ボカロ/KAITO、AKAITO、帯人/亜種差別設定)
「帰りましたー」 毎日寄り道をせずに帰宅する。 「マスター?」 どうやらマスターは出かけているらしい。 寂しいけれど、ある意味安堵した。 「ただいま」 マスターの家の一番奥の部屋の扉を開く。 「おかえりなさい」 「遅え」 「これでもまっすぐ帰ってきてるんだよ」 その部屋にいたのは、自分と瓜二つの二人。 「こいつと二人とかイライラすんだよ」 真っ赤な髪を持った彼が舌打ちとともに呟く。 「別に僕が何しようと勝手でしょ?」 「……またやったのか?」 「うん」 無邪気な笑顔でうなずくのは全身に包帯をまとった紫の彼。 「お願いだから、やめてくれよ……」 彼に近付くと微かに香る血のにおい。 「あーくん、そんなに睨まないでよ」 彼は止めるとは言ってくれなかった。その代わりにアカイトに言葉を投げる。 僕が帯人の手首を治療している間、アカイトと帯人の下らない口論が続いた。 「カイト」 「何、あーくん」 「外に出たい」 「……そうだね」 夏は日が長い。人目を避けなければならないアカイトは外出できる機会が減っていた。 「夜か、じゃあ、お祭りに行こうか」 「人たくさんいるだろ」 「でも、外に出たいし、お祭りいってみたいだろ?」 アカイトのつりあがった目は正直だ。 「逆に人が多すぎるから、大丈夫だよ。帯人も行く?」 「僕はいい。こんな恰好じゃさすがに人目を引くでしょ?」 「……あれをやめれば包帯なんてすぐ取れるんだよ」 「無理だよ、僕は必死なんだ」 「……そんなことしなくたって」 「僕が不安なんだ。あーくんだって」 「俺は違う」 「ふーん。じゃあカイトを独り占めしても怒らないよね?」 「…………」 「帯人、止めろ」 僕はアカイトと向き合った。 「僕はいなくならない。お前らを見捨てない」 「…………」 「外に行きたいならいくらでも付き合う。何よりお前らを優先してる。それじゃあ、不満?」 「……不満なんて一言も言ってねーよ」 「そうだね」 僕は笑う。 僕の分身。バグによって生まれた、もう一人の僕。 言いかえれば、僕の弱さから生まれた。 自分であって、自分ではない。 紛い物の君たちは表に出ることは許されない。 僕にすがるしかない。 いいよ、いくらでも頼って。 君らが望むのなら、唯一の居場所になろう。 それくらいしか、してあげられないのだから。
本当は中編ネタです。鏡音とかクオとか出てきます。 書くかは考え中。