中庭で(全1ページ/友達以上恋人未満/高校生/三人称)


 今日は快晴。風も特になし。
 そうなると単純な二人が考えることは同じだ。

「「中庭で食べよう!」」

「今日はあったかいからいいかもね」
「時々はいっか」

「言うと思った……」
「別にいいぜー」

 こうして、二人とそれぞれの友人二人は中庭に向かった。
 当然、昇降口で会うわけで。
「あ、そっちも中庭?」
「ああ」
「じゃあさ」
「だな」
 二人は短い会話をした後、自分たちの友人の元へ帰っていった。


「「「「「「いただきまーす」」」」」」
 中庭に陣取る六人。
 二人がそれぞれの友人に誘いかけたのは言うまでもない。
「やっぱ大人数もいいね」
 割と全員楽しそうだ。若干一名、不思議な顔をしているが。
「……あいつ、嫌だったかな」
 そういって彼は、自分の友人の表情を伺った。
(誘ったときも、乗り気じゃなかったしな……)
 でも彼の友人の顔は、いつものあきれた顔というよりは緊張が交じったような感じだった。
「嫌なわけじゃないと思うよ?」
「……は?」
 どうやら、彼の独り言は彼女に聞こえていたらしい。
「ちょっと見てて」
 そういうと彼女は皆に向かって話し始めた。
 どうやら席替えをするらしい。
「で、どうせなら男女交互にしようと思って」
 仲良くしたいじゃん? というとちらほらと賛成の声があがる。
 彼の友人の顔はさっきよりもこわばっていた。
(……わけわからん)

 席替えをすることが決まると、彼女と背の高い方の彼女の友人はニヤッと笑った。
 もう一人の背の低い方は、若干緊張の色が見えた。
 席替えは、先に男子が適当に座って、女子がじゃんけんで勝った順に間に座ることになった。
 つまり、一番最初に勝たせなければ、確実に緊張している二人は隣になる。
 彼女か、背の高い友人が、緊張している彼の友人の向かい側に座ってしまえばいいのだ。

 結果を言えば、彼女、背の低い友人、背の高い友人の順に勝った。
 緊張していた二人はもちろん隣どおしだ。
「まだ分かんないの?」
 彼女は彼に小声でしゃべりかけた。
 彼は小さくうなずく。
 彼女はため息をついた。
「…………?」

 しばらくすると、徐々に緊張していた二人も話し始めた。
「…………」
 彼は、ちらちらと二人を気にしていた。
「わかった?」
「あいつさ」
「ん?」
「あんな風にも笑えるんだな……」
 彼は素直に驚いているようだった。
「あーもう。そこまで分かっててなんで分かんないの?」
 彼女は大げさにあきれたと態度で示す。
 でもどこか楽しそうだ。
「悪かったな!」
 彼は少しすねる。といっても、おふざけ程度。
「じゃあさ、あの二人がまとってる空気は何色?」
「え、あ……?」
 にらみつけても色が見えるわけじゃないけど、思わず二人を睨んでしまった。
「も、桃色……?」
 彼女からの返答は来ない。
 不思議に思って彼女の方を見ると、口をおさえていた。
「…………オイ。何が面白かったんだよ?」
「あははははっ! だってさあ、桃色だよ、桃色!!」
 ツボが分からない。
「で、合ってんのか?」
「合ってる、合ってる。でも普通“ピンク”って言うでしょ」
(あー、そこか)
 なんとなく納得してしまった彼がいた。
「つまり?」
「……付き合ってんのか、あの二人」
「ピーンポーン! しかも多分つい最近からとみた」
「女の勘?」
「野生の勘!」
 その後はしばらく、たわいもない話をしていた。


「ほんと、ピンクオーラってまぶしいね。自分からは一生出せない気がするよ」
「無理だろうな」
「即答しなくても……」
 と言いつつ、彼女も思っていたから、これ以上は言わない。
「俺らは……せいぜい黄色ってとこだろうな」
「うわぁ……。なんかしっくりきすぎて、きもちわるっ」
「いいんじゃね? 楽しそうで」
 確かにここは心地よくて。
 大切にしたくなる空間だった。


終|下駄箱に壁越しに教室で|中庭で|home

おまけ

「でも、まさかあいつの彼女が、な……」
「あたしも最初は驚いたよ……」
「接点なさそうだよな……」
「割とあの子は、あんたの友達の名前ちらほら言ってたけどね……」
「へえ……」
「でも、こんなに早くくっつくとは思わなかったよ……」
「あいつ、興味なさそうなこといってたのにな……」
「…………」
「…………」
「それにしても、ねえ……」
「まさかあいつの彼女が、"アイドル"だとはなあ……」