バレンタイン(全2ページ/幼馴染カップル/高校生)


 今日は部活が終わった後、真っすぐ貴の家に向かった。
「貴ー」
 荷物で両手がふさがっているあたしは、貴の家の前で直接呼んだ。
 すると、直ぐに玄関の扉が開く。
「いらっしゃい」
 貴は扉をおさえると、あたしの大荷物を見て笑った。
「すげえ。さすがしのちゃん」
 貴の軽口に付き合っていると、いつまでも家に入れない気がしたから、無視。
 お邪魔します、と貴以外いないのは分かっているけど言って、あたしは靴を脱いだ。いつの間にかあたし専用になっていたスリッパを履く。
 一旦降ろした荷物は全て貴が持っていったから、あたしは手ぶらでリビングに向かった。
「貴のは?」
 貴があたしの荷物をテーブルに置いたから、あたしはそのテーブルのイスに座った。
「これ」
 いつの間にか冷蔵庫から飲み物と小さな紙袋を取ってきていたらしい。小さな紙袋をあたしに渡してきた。
 あたしは何となく中身を見て数を確認する。
「四つか。モテるね」
 向かいに腰をかけたあいつに視線を戻した。
「他にも三回呼び出された。もちろんもらわなかったけど」
 ニヤニヤと楽しそうに笑うあいつがいて、あたしは思わずため息をついた。
「しのちゃん、嫉妬?」
「いや、なんでこんなやつがモテるんだろうと世の中が心配になった」
「真面目に答えんなよ、へこむ」
「あっそ」
 あたしは自分の荷物に手を伸ばした。
「しのはいくつもらった?」
「…………」
 荷物に手を入れようと思ったが、面倒くさくなることが目に見えていたから、あたしは荷物をテーブルの上でひっくり返した。
「…………」
「…………」
 バラバラところがる中身。
「……すげえな」
「あー……、ガチは貴と同じくらいしかないと思う」
「……四つ?」
「いや、七つ」
「…………」
 袋から出したことによって、より甘い匂いが広がる。
「全部食えるかな……」
「……頑張るしかないな」


 今日は二月十五日月曜日。
 一日遅れのバレンタインデーだった。


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忍のガチチョコの大半は女の子から。